「6月は梅雨だから、不動産は売れにくい」——空き家の売却を考えはじめると、一度は耳にする言葉ではないでしょうか。雨で内見が減る、ジメジメして印象が悪い、夏休み前で買い手が乗らない。肌感覚としては納得しやすい話です。

ただ、実際の取引件数や価格の動きを公的データで見直すと、「梅雨は売れない」という通説は、必ずしも数字に裏付けされていない ことが分かります。本記事では、東日本レインズ(REINS)・近畿レインズの月例マーケットウォッチと、国土交通省の不動産価格指数から、梅雨期にあたる6月の市場の実態を検証します。

通説:「梅雨は不動産が動かない」と言われる4つの理由

「梅雨は売れない」と言われる代表的な根拠は、おおむね次の4つに整理できます。

通説の根拠

中身

内見が雨で減る

来店・現地確認のキャンセルが増える

物件の印象が下がる

湿気・カビ・雨染みで第一印象が悪くなる

引っ越し閑散期と重なる

1〜3月の繁忙期が終わり、夏休み前の谷間

夏のレジャー優先

関心が住み替えから旅行・帰省へ移る

賃貸市場ではこの傾向が比較的はっきり出るとされ、6〜8月は来店率が落ちると業界向け資料でも指摘されています(参考: 不動産業界の繁忙期と閑散期 — いい生活)。ただし、これは「賃貸の引っ越し需要」や「来店ベース」の話です。中古戸建て・中古マンションの売買成約まで含めて同じことが言えるかは、別途検証が必要です。

検証1: 首都圏中古マンションの6月成約件数

まず、首都圏の中古マンションから見ます。

東日本レインズの月例マーケットウォッチによれば、2024年6月の首都圏中古マンション成約件数は3,259件で、前年同月比+4.8%。当時、13ヶ月連続で前年同月を上回っていました(参考: 東日本レインズ 月例速報 Market Watch サマリーレポート 2024年6月度)。同月の成約価格は4,956万円(前年同月比+7.5%)、㎡単価は77.95万円/㎡(同+7.9%)と、価格面でも50ヶ月連続で前年を上回る堅調な水準でした。

2025年通年でも、首都圏中古マンション成約件数は49,114件(前年比+31.9%)と3年連続の増加となり、6月単月でも前年同月の水準を継続して上回っています(参考: 東日本レインズ 不動産市場動向(統計))。少なくとも数字の上では、首都圏中古マンションの6月は前年同月比でプラスを刻み続けてきた月 ということになります。

検証2: 首都圏中古戸建ての6月成約件数

戸建てはどうでしょうか。

REINS集計では、2025年上半期(1〜6月)の首都圏中古一戸建て成約件数は10,669件で、前年同期7,099件から+50.3%の大幅増となりました。エリア別では東京都+43.3%、神奈川県+57.0%、埼玉県+59.2%、千葉県+44.9%と、すべての都県で4〜6割の伸びを示しています(参考: 2025年上半期の首都圏不動産市況まとめ — 住まいの情報館 / 出典は東日本レインズ集計値)。

「雨だから戸建ては見に行きたくない」という心理はあっても、市場全体としては梅雨でも取引が止まる気配はありません。新築の価格上昇と在庫減少で買い手が中古へ流入する構造変化のほうが、季節要因より大きな影響を与えていたことが読み取れます。

検証3: 近畿圏(関西)の6月の動き

地域差はあるのでしょうか。関西の動きも確認します。

近畿レインズのデータでは、2025年4〜6月期の近畿圏中古マンション成約件数は5,217件で、前年同期比+24.7%。7期(四半期)連続の増加となりました(参考: 近畿圏レインズ 25年4〜6月期 — 住宅新報)。成約㎡単価は21ヶ月連続で前年同月を上回り、12エリア中11エリアで成約件数が増えています(参考: 近畿レインズ マンスリーレポート)。

首都圏ほどの伸び率ではないものの、関西でも梅雨期の4〜6月に成約件数・単価ともに増えており、「梅雨だから関西は動かない」というデータにはなっていません。

検証4: 国土交通省「不動産価格指数」で見る6月の価格

価格の動きも確認します。国交省が毎月公表する不動産価格指数(2010年平均=100、季節調整値)で、2025年6月分の数字は次の通りでした。

区分

2025年6月の季節調整値

前月比

住宅総合

144.1

+0.7%

戸建住宅

118.8

+0.3%

区分所有マンション

上昇トレンド継続

プラス

(出典: 国土交通省 不動産価格指数(令和7年6月・第2四半期分))

季節調整済みの指数なので、季節要因を除いた純粋な価格トレンドを表します。6月分は住宅総合・戸建てともに前月比プラスで、「梅雨だから価格が落ちる」という減少シグナルは出ていません。その後の7月分は住宅総合144.2(前月比▲0.1%)、9月分145.4(横ばい)と高止まりしており、6月から夏場にかけて指数の崩れは確認できませんでした(参考: 国土交通省 不動産価格指数 推移ページ)。

通説と実態のギャップ — なぜズレるのか

ここまでをまとめると、「梅雨は売れない」という通説と実データの間には、次のようなギャップが見えてきます。

つまり「6月は雨で来店が減る」までは事実に近いものの、「だから売れない」「だから査定が下がる」までつなげるのは、データの裏付けが弱いということです。

売り出し時期を考えるときの3つの判断材料

「梅雨だから先送り」と決め打ちせず、次の3点を見て判断するのがおすすめです。

  1. 直近の月例マーケットウォッチで、対象エリアの前年同月比をチェック(首都圏=東日本レインズ、関西=近畿レインズ)

  2. 国交省の不動産価格指数で、住宅総合・戸建ての推移を見る(季節調整済み)

  3. 複数社の査定額と「3ヶ月で売り抜ける前提価格」のズレを把握する

季節を理由に売却準備を先送りすると、その間に固定資産税や管理コストが積み上がります。梅雨だからやめる、ではなく、梅雨だから何が起きているかを数字で確認する という構えが現実的です。

サントの現場視点

弊社サントは関西エリア(東大阪・八尾・大阪市中心)で中古戸建ての買取再販を行っています。実感としても、梅雨期の6月に問い合わせが急減することはほとんどありません。むしろ、固定資産税の納付通知書が4〜5月に届いた直後の延長線上で、6月にご相談を頂くケースは例年一定数あります。

買取再販モデルは、一般のお客様(エンドユーザー)の住み替え需要に直接依存しないため、梅雨や真夏といった季節要因の影響を受けにくいのが特徴です。査定は最短即日〜3日、現況のまま(屋内残置物・解体・アスベスト調査もすべて自社対応)買取可能。「梅雨だから秋まで保留しよう」と考えがちな方にも、まず6月時点の数字を一度ご確認いただくことをおすすめしています。

まとめ

「梅雨は不動産が売れない」という通説は、賃貸の来店動向や肌感覚から広がった話で、売買成約データを見ると裏付けは弱いことが分かりました。首都圏・近畿圏ともに6月の成約件数は前年同月比プラスを続け、国交省の価格指数も6月に下落シグナルを出していません。季節で判断を保留される前に、直近の月例レポートと価格指数でご自身のエリアの実態を確認されてみてください。

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