解説
行政代執行は、法令で定められた義務を所有者が履行しないとき、行政庁が本人に代わって義務の内容を実現し、その費用を本人から徴収する制度です。空き家分野では、特定空家の所有者が市町村の命令に従わない場合に、建物の除却(解体)や立木の伐採、廃材の撤去等が代執行として行われることがあります。実施には事前の戒告と代執行令書による通知が必要で、所有者には弁明の機会も与えられます。実務上は、市町村が解体業者を選定して工事を発注し、解体後に費用を所有者に請求するという流れになります。費用回収のための差押えなど、強制徴収の手続も用意されています。
関連法令・制度
一般法は行政代執行法(昭和23年法律第43号)です。空き家については、空家等対策特別措置法第22条が手続を定めています。代執行費用は国税滞納処分の例により強制徴収できるとされており、税の徴収と同様の手続で回収されます。
空き家所有者にとっての意味
代執行が行われると、その費用は所有者の負担となり、滞納すれば財産の差押え等の対象になります。費用は建物の規模や立地、廃材処理量によって数百万円規模になることも珍しくありません。命令を受けた時点で速やかに対応すれば代執行を避けられるため、市町村との連絡を維持し、自主的な解体や、補助金の活用、土地建物の売却、相続放棄を含む相続手続の見直しなど、代替手段を含めて検討することが現実的です。費用の捻出が難しい場合は、自治体の解体補助金、金融機関のリフォーム解体ローン、無料の専門家相談窓口の利用なども選択肢になります。代執行の事例は国土交通省や自治体の公表資料で参照でき、実務の実態を把握する材料になります。
よくある誤解・注意点
「行政が解体してくれる」と捉えるのは誤りです。費用は最終的に所有者に請求されます。また、所有者不明の場合に行われる略式代執行とは手続が異なり、本制度は命令の名宛人がいる場合に用いられます。
