「親の実家を相続放棄しようと思っているけれど、放棄したら本当にすべての責任から解放されるのか…」
「相続放棄すれば固定資産税もかからないと聞いたけれど、実務ではどうなっているのだろう…」
「兄弟全員で放棄すればもう空き家のことは考えなくてよいのか、それとも何かが残るのか…」
こうしたお悩みは、東大阪市・八尾市・大阪市で空き家をお持ちの方からご相談を伺うテーマとして、近年よく話題にのぼります。
結論から申し上げると、相続放棄は「責任を切り離す最後の手段」であって、「空き家問題を片付ける手段」ではありません。放棄した"その後"に何が起きるかを、司法統計と法令、そして現場の事例から3つの分岐に整理し、最後に放棄する前に検討すべき「第4の選択肢」をお伝えします。
まず数字で見る|相続放棄は「特別な選択」ではなくなった
最高裁が公表している司法統計年報 家事事件編によると、家庭裁判所が受理した相続放棄の申述件数は、次のように推移しています。
2013年:約17万件
2018年:約21万件
2023年:28万9,451件(前年比+3.4%)
直近も年間30万件目前まで増加傾向
10年前と比べて約1.7倍。もはや「特別な選択」ではなく、相続の10件に1件超は放棄されている計算です。背景には、①空き家の維持コスト、②相続登記義務化(2024年4月施行)、③親世代の資産の複雑化があります。
「うちも放棄しておこう」と気軽に判断される方が増える一方、放棄した"その後"の実務が追いついていない現実があります。以下の3分岐で整理します。

放棄した"その後"の3つの分岐|どこに行き着くのかで負担がまったく違う
分岐A|放棄時に「現に占有していた人」は管理義務が残る
2023年4月施行の改正民法940条により、相続放棄後も保存義務を負うのは「放棄の時に現に占有していた者」に限定されました。この改正の詳しい中身は、先日公開した「相続放棄したのに管理責任は残る」って本当…?|民法940条改正と空き家オーナーの選択肢で解説しています。
問題は、「現に占有していた」の判定が実務でどう転ぶかです。ご家族で少しでも実家に住んでいた、鍵を持って出入りしていた、庭木の手入れを続けていた──こうしたケースでは、放棄後も「相続財産清算人が選任されるまで」保存義務が続くと解される場面が現場では出てきています。
結果として、放棄したのにご近所の方から「屋根瓦が落ちてきた」「敷地から雑草が越境している」といった連絡が入り、対応せざるを得なくなったという相談を、サントでも複数受けてきました。
分岐B|誰も占有していない場合は「相続財産清算人」の選任が必要
全員が相続放棄し、かつ誰も占有していなかった場合、その空き家は所有者不在の宙ぶらりん状態になります。ここで登場するのが民法952条の相続財産清算人(2023年4月の改正で「相続財産管理人」から名称変更)です。
家庭裁判所に選任申立てをするには、通常予納金として20万円〜100万円程度(家庭裁判所と物件規模による)が必要で、これを負担するのは利害関係人──多くは債権者や、放棄した親族、あるいは自治体です。
親族が申立てるケース:放棄後も名義が残っている状態を早期に解消したい場合
誰も申立てないケース:物件が10年、20年と放置され、所有者不明土地の温床に
「誰も申立てない」ケースが実は多く、放棄したからと安心していたら20年後に自治体から問い合わせが来たという事例も、東大阪市・八尾市を中心とした大阪府内の空き家管理では珍しくありません。
分岐C|全員放棄が完結すると、最終的には国庫帰属か特定空家指定へ
相続財産清算人が選任され、清算手続きが完了すると、残余財産は国庫に帰属します。ここは制度的にすっきり見えるのですが、実務のハードルが高いのは先週の記事相続した実家の土地、国に返還できる?|国庫帰属制度2年で見えた「国が引き取れる土地・引き取れない土地」で整理したとおりです。
具体的には──
建物が残ったままの土地は原則対象外:解体してからでないと国庫帰属申請ができない
却下・不承認理由:書類不備、通路要件、境界不明、地上の工作物、整備必要な森林
負担金:宅地で原則20万円から(10年分の管理費相当)
一方、清算人選任も国庫帰属も進まないまま放置された物件は、空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく特定空家等として指定され、行政代執行で解体・撤去されるケースが増えています。この場合、代執行費用は本来の所有者(=放棄していない次順位相続人 or 相続財産清算人が管理する財産)に請求されるため、「放棄すれば費用は全て国持ち」という理解は正しくありません。
見落とされがちな|放棄後に襲ってくる「3つの落とし穴」

落とし穴1|固定資産税の「みなす所有者」課税は放棄後も来ることがある
地方税法343条4項は、登記名義人が亡くなり、賦課期日(1月1日)時点で相続登記が未了の場合、現に所有している者を「みなす所有者」として課税できる規定です。
相続放棄をした人であっても、自治体が「相続放棄の事実を知らない」段階では、この規定に基づいて納税通知書が届くことがあります。届いた通知書を無視すると滞納扱いになり、放棄の申述受理通知書を提示して初めて訂正されるケースが実務では散見されます。
「放棄したのに納税通知書が来た」という驚きが、ご家族の心理的負担を増やしているのが現場の実情です。
落とし穴2|相続財産清算人の予納金は「戻ってこない」ことが多い
分岐Bで触れた予納金20万〜100万円は、清算手続きで残余財産から精算できる建前ですが、空き家しか残っていないケースでは残余財産がほとんど発生せず、予納金は事実上"戻ってこない" ことが多いのが実情です。
「予納金を出せる人が誰もいない」まま放置される物件が積み上がっていくのも、この構造ゆえです。
落とし穴3|相続登記義務化(2024.4施行)との交錯
2024年4月から相続登記の申請義務化が始まり、相続を知った日から3年以内の登記申請が原則義務になりました(正当な理由なく怠ると10万円以下の過料)。
放棄する場合はこの義務対象から外れますが、「放棄するか、登記するか」を3年以内に判断しなければいけないという時間的プレッシャーが加わったことになります。「とりあえず様子を見よう」が通用しなくなったのが、2024年以降の相続実務の大きな変化です。
第4の選択肢|「放棄する前に売る」が最も負担が軽いことが多い
ここまで見てきた3分岐は、いずれも放棄した"後"の話でした。しかし現場でご相談を伺っていると、放棄を決める前に売却を検討していれば、時間もお金も心理的負担もはるかに軽く済んだはずというケースがとても多いのです。
放棄と売却の実務コストを、フェアに並べて比較すると次のようになります。
項目 | 相続放棄 | 売却(現況買取) |
|---|---|---|
手続き期間 | 相続を知った日から3か月以内に申述 | 買取なら査定〜決済まで1〜2か月 |
費用 | 申述費用(数千円)+清算人予納金(発生時20〜100万円) | 仲介手数料・解体費0円の現況買取なら実質負担なし |
管理義務 | 「現に占有していた者」に残る可能性 | 引渡し完了で完全に切り離せる |
固定資産税 | 未登記期間中は「みなす所有者」課税リスク | 所有権移転で完全に外れる |
心理的負担 | ご近所の方からの連絡が続く可能性 | 引渡し後は関係が完結 |
家族関係 | 兄弟間で放棄の足並みを揃える必要 | 売却代金は遺産分割の対象として整理しやすい |
手元に残る額 | 原則ゼロ(マイナスもあり得る) | 買取価格が現金で残る |
昭和築の戸建てでも、東大阪市・八尾市・大阪市を含む大阪府内では底地価値がしっかりある地域が多く、「放棄しかない」と考えていた物件でも、買取査定で現金化の余地が見つかるケースがあります。
放棄は「売却の見込みが立たない場合の最終手段」であって、最初に選ぶ選択肢ではない──これが、10年以上にわたり空き家買取を続けてきたサントの現場からのご提案です。
サントが東大阪・八尾を中心に大阪府内で見てきた|「放棄前の売却切り替え」の実務パターン

サントは東大阪市長堂に本社を置き、府東部を中心に買取再販・自社解体・借家人付き買取・狭小地/底地対応まで自社で一貫対応してきました。「放棄する前に相談してよかった」と言っていただいた事例には、次のような共通点があります。
昭和築で"買い手がつかない"と思い込んでいた物件:現況買取なら解体費もリフォーム費も所有者負担ゼロ
借家人が付いていて売却できないと諦めていた物件:借家人付きのまま買取
相続人が遠方で管理不能になっていた物件:現地確認・残置物処分までワンストップ対応
再建築不可・接道要件を満たさない狭小地:底地・私道持分含めて査定
いずれのケースも共通するのは、「放棄しか道がない」と決めつける前に、まず査定を並べたら選択肢が広がったという点です。
まとめ|放棄は"最終手段"、まず「売却で解決できる余地」を確認する
相続放棄の受理件数は年間28万件超、10年で1.7倍に増加している
放棄後の実務は3つの分岐(現に占有していた人の管理義務/相続財産清算人選任/国庫帰属または特定空家)に整理でき、いずれも負担ゼロにはならない
落とし穴として固定資産税のみなす所有者課税・清算人予納金・相続登記義務化との交錯がある
放棄と売却の実務コストを並べて比較すると、多くのケースで売却のほうが時間・費用・心理的負担すべてで軽い
「放棄しかない」と決める前に、必ず地元の買取業者の査定と並べて検討することを、サントは現場から強くご提案しています
「相続放棄を検討している」というご家族こそ、まず一度、無料の買取査定を並べて比較してみてください。「放棄しか道がない」と思っていた物件が、買取で現金化できる余地があるかもしれません。過去記事の「相続放棄したのに管理責任は残る」って本当…?と相続した実家の土地、国に返還できる?|国庫帰属制度2年で見えた「国が引き取れる土地・引き取れない土地」も、あわせてご参照ください。
FAQ|相続放棄と売却について、よくあるご質問
Q1|相続放棄すれば固定資産税は一切かからなくなりますか?
A|自治体が相続放棄の事実を把握するまでは、地方税法343条4項の「みなす所有者」規定により納税通知書が届くことがあります。届いた場合は放棄申述受理通知書を提示して訂正してもらう対応が必要です。
Q2|放棄した空き家がご近所の方に被害を与えたら誰が責任を負いますか?
A|改正民法940条により、放棄時に「現に占有していた者」が保存義務を負います。占有していなかった場合でも、相続財産清算人が選任されるまでは実務上のトラブル対応が求められる場面があります。詳しくは民法940条改正の解説記事をご参照ください。
Q3|全員が相続放棄したら、その空き家は自動的に国のものになりますか?
A|自動ではなく、家庭裁判所への相続財産清算人選任申立てが必要です(民法952条)。予納金20万〜100万円程度がかかり、清算手続き完了後に残余財産が国庫に帰属します。
Q4|放棄と売却、どちらが得か目安を教えてください。
A|買取価格が「解体費+残置物処分費+各種手続費用」を上回るなら売却のほうが手元に残る額が大きいケースが多くなります。東大阪市・八尾市・大阪市を含む大阪府内の昭和築戸建てでも、底地価値のある立地では買取が成立する余地があります。まず査定を取って、放棄と並べて比較することをお勧めします。
Q5|すでに相続放棄の申述を出してしまったら、売却はもうできませんか?
A|放棄が受理されると所有権を持たないため、その物件を直接売却することはできません。ただし、次順位相続人がいる場合はその方が売却主体になれるため、家庭裁判所の受理前に一度専門家にご相談ください。
参考・出典
