「親と会うたびに物忘れが目に見えて進んでいて、実家をどうするか話し合わないと…と焦っている」
「家族信託という言葉は聞いたことがあるけれど、費用が30万から100万と幅があって、うちで使えるのか判断がつかない」
「成年後見と家族信託の違いを両方調べても、頭がこんがらがってきた」
両親が70代を迎えたご家族から、こうしたご相談が寄せられます。「認知症になる前に、実家のことを整えておきたい」という気持ちの背景には、テレビや新聞で見かける「認知症で預金が凍結される」ニュースへの不安があります。
まず結論として|家族信託は「認知症の診断が下りる前」に契約する制度
家族信託の最大のポイントは、両親の判断能力があるうちに契約することです。認知症の診断が下りた後は、契約自体ができなくなります。
費用は初期に30〜100万円かかります。成年後見の月々2〜6万円の後見報酬(親が亡くなるまで続く)と比べると初期費用は重く感じますが、長期では家族信託のほうが安く済む場合が多くあります。
ただし、家族信託には「できないこと」もあります。契約前に必ず知っておきたい3つの注意点を、この記事で順を追ってご紹介します。
家族信託とは|3人の登場人物で成り立つ仕組み
家族信託は信託法(平成18年法律第108号)を根拠にした制度で、次の3人が登場します。
- 委託者:財産を託す人(実家の場合、多くはご両親)
- 受託者:財産を管理する人(実家の場合、多くはお子さん)
- 受益者:財産から利益を受ける人(多くの場合、委託者と同じ=ご両親)
実家の場合、ご両親が「委託者かつ受益者」、お子さんが「受託者」という形が一般的です。ご両親が認知症になったあとも、受託者であるお子さんが、契約書に定めた範囲で実家を売る・貸す・活用するといった行為ができます。
認知症による「財産凍結」|家族信託が必要になる理由
財産凍結とは、認知症などで判断能力が低下した方の財産が、事実上、売却も引き出しもできなくなる状態です。
実務で起きる典型的な出来事は次のようなものです。
- 銀行預金の引き出しが制限:窓口でご本人の意思確認ができないため
- 実家の売却が停止:司法書士・公証人がご本人の判断能力を確認できない
- 不動産の賃貸契約が結べない:契約書へのサインができない
- リフォームや修繕の発注も止まる:見積書への同意が取れない
これらは「診断が下りた瞬間」ではなく、金融機関や登記所の窓口で判断能力が疑われた時点で始まります。予防策として、判断能力があるうちに家族信託を組んでおくと、こうした場面でも受託者であるお子さんが契約を進められます。
家族信託と成年後見の違い|どちらが向くか
ここが最も混乱しやすいところです。両者の違いを1つの表にまとめます。
| 項目 | 家族信託 | 成年後見 |
|---|---|---|
| 始めるタイミング | 認知症になる前 | 認知症になった後 |
| 初期費用 | 30〜100万円 | 10〜30万円 |
| 継続費用 | ほぼゼロ | 後見報酬 月2〜6万円(生涯) |
| 実家の売却 | 契約書で定めた範囲で可能 | 家庭裁判所の許可が毎回必要 |
| 身上監護(介護契約・医療同意) | 対象外 | 可能 |
| 後見人・受託者の指定 | 家族で自由に決められる | 家庭裁判所が判定(第三者になる場合も) |
詳しくは成年後見制度もあわせてご覧ください。
家族信託の費用|30〜100万円のうち、何にいくらかかるのか
費用の幅は、信託する財産の種類と金額、家族関係の複雑さで決まります。単純な場合と複雑な場合で、それぞれ内訳が違います。
ミニマム構成(実家1軒+預金の単純な場合、30〜50万円前後)
フル構成(複数不動産+事業資産を含む複雑な場合、80〜100万円前後)
- 信託契約書作成(複雑な条項設計込み):50〜70万円
- 公証人手数料:5〜10万円
- 不動産の信託登記:5〜15万円
- 信託口口座の開設支援:5〜10万円
- 税務スキーム設計(税理士):5〜10万円
試算例|東大阪の実家(土地50坪・木造2階建て・評価額2,500万円・預金なし)
- 信託契約書作成:40万円
- 公証人手数料:5万円
- 信託登記費用:5万円
- 合計:50万円前後
契約前に知っておきたい3つの注意点
注意点①|身上監護(介護契約・医療同意)は家族信託では扱えない
家族信託は「財産管理」だけをカバーする制度です。ご両親の入院手続き、介護施設との契約、医療同意などは、家族信託では扱えません。
身上監護が必要になった場合は、家族信託と別に成年後見(法定後見または任意後見)の手続きが必要になります。「認知症になった後の生活すべて」をカバーしたい場合は、任意後見と家族信託を併用する設計も検討できます。
注意点②|信託した不動産の損益通算ができなくなる
信託した収益不動産(賃貸アパート等)で生じた損失は、信託していない他の不動産や給与所得と損益通算できません。
実家のみを信託する場合は影響が小さいですが、賃貸経営中のアパートなどを信託する場合、税務上のメリットが減る場合があります。契約前に税理士へのご相談がおすすめです。
注意点③|契約後は内容変更が原則できない
信託契約は、契約書に「変更条項」を入れておかない限り、当初の内容通りに執行されます。数年後に「やっぱりこの条項を変えたい」と思っても、原則として変更が難しくなります。
契約書作成時に、5〜10年後の家族状況(お子さんの結婚・独立、ご両親の要介護度上昇など)まで想定して条項を組んでおくことが重要です。
「家族信託 vs そもそも売却」|出口の比較
家族信託は「実家を残しながら管理する」制度です。一方、そもそも実家を残す必要がない場合は、売却で問題を切り離してしまうほうが早くて安く済むことがあります。
| 項目 | 家族信託 | 売却(現況買取) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 30〜100万円 | 0円 |
| 期間 | 契約準備〜締結まで1〜3か月 | 1〜2か月 |
| 判断能力の要件 | 契約時に判断能力が必要 | 契約時に判断能力が必要 |
| 実家の維持コスト | 継続(固定資産税・修繕・保険) | ゼロ |
| 手元に残る額 | 賃貸収入 or 保有価値 | 買取価格の全額 |
| 家族間のトラブル | 受託者の選定・報酬で発生の余地 | 売却代金の分配で発生の余地 |
判断の分かれ道はシンプルです。「実家を残したい」なら家族信託、「維持の負担から解放されたい」なら売却。ご両親の希望とお子さんの負担感の両方を並べて、ご家族で話し合われる材料になります。
サントが対応できる範囲
株式会社サントは、東大阪市・八尾市を中心に、空き家の買取・自社解体・借家人付き買取を一貫対応しています。家族信託そのものは司法書士・弁護士の領域ですが、以下の場面で連携できます。
- 「家族信託か売却か」の判断材料としての査定書提供(最短即日〜3営業日)
- 家族信託の契約後、受託者であるお子さんが実家を売却する際の現況買取
- 提携リーガルパートナー(司法書士・税理士)へのお取次ぎ
「まだ売る予定はないけれど、判断材料として査定だけ取っておきたい」というご家族にも、無料で対応しています。
関連する記事・用語
- 財産凍結|認知症で口座・実家が売却も活用もできなくなる状態
- 成年後見制度|認知症後に選ばれる制度
- 認知症|家族信託・成年後見が必要になる背景
- 介護をきっかけに始めた実家整理|施設入居と半年での売却
よくあるご質問(FAQ)
Q1|親が認知症と診断されてからでも家族信託は組めますか?
診断後は原則として組めません。契約時にご本人の判断能力が確認できないためです。すでに診断が下りている場合は、成年後見制度の利用を検討されるとよいかもしれません。「軽度認知障害(MCI)」の段階なら、契約可能な余地が残る場合もあるので、司法書士・弁護士へ早めに相談されると安心です。
Q2|家族信託をすると相続税は安くなりますか?
相続税の節税効果は原則としてありません。家族信託は「認知症対策」であって、節税スキームではないことにご注意ください。相続税対策をあわせて検討したい場合は、税理士・信託銀行との併用相談がおすすめです。
Q3|受託者になった子が、勝手に実家を売ったり使い込んだりしないか心配です
信託法で受託者には「善管注意義務」「忠実義務」があり、契約書に定めた目的以外で財産を使うと違法になります。心配な場合は、契約書で信託監督人を第三者(司法書士・弁護士等)に指定する設計もあります。
Q4|家族信託の契約後、内容を見直すことはできますか?
契約書に「変更条項」を入れておかない限り、原則として変更は難しくなります。当初の契約書作成時に、5〜10年後の家族状況まで想定して条項を組んでおくことが大切です。契約書のドラフト段階で、「もしお子さんが海外に転居したら?」「もし実家を売って介護費用に充てたくなったら?」等の想定を1つずつ盛り込むことをおすすめします。
Q5|実家を信託せずに、売却してしまったほうが早くないですか?
「実家を残す必要がない」ご家族なら、売却は合理的な判断です。売却なら30〜100万円の信託費用が不要で、以後の維持コスト(固定資産税・修繕費・保険)からも解放されます。家族信託は「実家を残しながら守る」場合の制度と割り切って考えると、ご家族の判断が整理しやすくなります。
まとめ|認知症の診断が下りる前が、判断のタイミング
家族信託は「認知症になる前」の一手です。ご両親の判断能力があるうちに、家族で「実家をどうしていくか」を話し合い、方向性を決めておくことが、後々の家族関係にも影響してきます。
3つの道を並べると、次のように選び分けが見えてきます。
- 家族信託が向く場合:実家を残したい、月々の後見報酬を避けたい、家族間で信頼関係がある
- 成年後見が向く場合:すでに認知症の診断が下りている、身上監護(介護契約・医療同意)も必要
- 売却が向く場合:実家を残す必要がない、維持コストと管理義務から解放されたい
初期費用30〜100万円の負担と、月々の後見報酬(生涯続く)の負担、そして売却で全部片づける身軽さ――3つを並べてみると、ご家族に合う道が見えてきます。
東大阪・八尾・大阪市で空き家のご相談はサントへ
株式会社サントでは、東大阪市・八尾市を中心に大阪府内全域で、空き家の買取・自社解体を一貫対応しています。「家族信託か売却か」の判断材料として、査定書もお渡ししています。長屋・連棟・狭小地・底地・再建築不可・借家人付きなど、関西の一戸建て事情に合わせて現況のまま確認します。
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