「ニュースで台風の浸水被害を見たけれど、空き家になっている実家はどうなっているのか心配…」
「もし浸水していたら、まず何を申請すればいいのか分からない…」
「火災保険に入っていれば大丈夫と聞いていたけれど、空き家でも対象になるのか不安…」
2026年6月25日から28日にかけて、 台風7号(メーカラー)と台風8号(ヒーゴス)のダブル台風 が日本に接近・通過しました。 台風7号は6月27日に房総半島南端をかすめて温帯低気圧に変わり 、関東を中心に記録的な雨量を観測した地点もあります。
一方で、空き家をお持ちのご家族にあまり知られていないのが、 「実居住していない空き家は、台風で浸水しても罹災(りさい)証明書ではなく『被災届出証明書』しか発行されないケースが多い」 という制度上の仕組みです。この差は、保険金請求・解体補助・災害ごみ処理など、その先のすべての手続きの足場になります。
この記事では、 内閣府の運用指針 と 自治体の公式運用 をもとに、2つの証明書のちがいと、空き家オーナーが直面しやすい3つの壁を整理しました。

2026年6月、ダブル台風が日本を通過しました
日本気象協会 tenki.jpが公開している情報によると、 台風7号(メーカラー) は6月22日ごろに沖縄の南で「非常に強い」勢力にまで発達し、その後北上。 6月27日21時に関東の東で温帯低気圧に変わりました 。
同時期に発生した 台風8号(ヒーゴス) も並走する形でマリアナ諸島付近から日本の南海上を進み、伊豆諸島・小笠原諸島周辺で高波・強風が観測されました。 「ダブル台風」 という呼び方で、25日から28日にかけて広い範囲で警戒が呼びかけられたのは、この2つの台風の進路がほぼ並走したためです。
項目 | 台風7号(メーカラー) | 台風8号(ヒーゴス) |
|---|---|---|
最盛期の中心気圧 | 950hPa前後(非常に強い) | 1,000hPa前後 |
日本への接近 | 6月26〜27日に沖縄〜本州南岸を北上 | 6月下旬に日本の南を東進 |
温帯低気圧化 | 6月27日21時(関東の東) | 7月にかけて日本の東へ |
関東を中心に、24時間雨量が 千葉県銚子で約192.0mm 、 東京都大島で約182.0mm を記録した地点もありました(2026年6月27日時点の観測値、出典はウェザーニュース 台風7号関連報)。 6月としては記録的な雨量 となった地点もあり、本格的な台風シーズンに先立つ警戒イベントとして整理されています。
ご実家が空き家のままになっている場合、 「現地に行っていないので、被害があったかどうか分からない」 という状況も少なくありません。まずは ご近所の方への連絡や、現地のご親族・管理会社への確認 から始めるのが一般的な流れです。
罹災証明書と被災届出証明書、空き家には「2つの証明書」がある
ここからが本題です。台風や豪雨で建物に被害が出たとき、自治体に申請して発行してもらう証明書は 1種類ではありません 。 「住家」と「非住家」で発行される証明書がちがう 仕組みです。
東広島市公式「り災証明書・被災届出証明書の発行について」の運用は、全国の自治体運用と整合する代表的な例です。
項目 | 罹災(り災)証明書 | 被災届出証明書 |
|---|---|---|
対象 | 住家(居住の実態あり) | 非住家(空き家・倉庫・店舗など) |
証明する内容 | 被害の程度(全壊・半壊など) | 被災届出があったこと |
職員による現地調査 | あり | なし |
被害状況の写真 | 任意(調査で確認) | 必須(自分で撮影) |
申請期限の目安 | 災害発生日の翌日から 3年以内 | 同 3年以内 |
主な活用先 | 各種公的支援・税の減免・保険請求 | 保険請求(限定的)・自己記録 |
ポイントは 「居住の実態がない空き家は住家として扱われない」 ことです。長期間ご家族が住まわれていなかった実家は、被害認定の制度上は 「非住家」 の枠に整理されるため、罹災証明書ではなく 被災届出証明書 が発行される運用になっている自治体が多いという構造です。

内閣府の住家被害認定は「実居住」が前提です
内閣府防災情報「災害に係る住家の被害認定」では、罹災証明書の根拠となる 「災害に係る住家の被害認定基準運用指針」 が令和8年6月版として公表されています。この指針が、自治体が「住家か非住家か」「全壊か半壊か」を判定する 全国共通の物差し になっています。
指針では 「住家」とは現実に居住のため使用している建物 と整理されており、 居住の実態がない空き家は『非住家』扱い となるのが基本です。浸水被害については、 浸水深(床下、床上、1m、天井) に応じて被害区分を段階的に判定する基準が設けられています(具体の基準は運用指針の本文をご参照ください)。
つまり、空き家のご実家が浸水していた場合でも、 「住家としての被害認定」を受けるルートが原則として開かれていない ということになります。これが、後述する「3つの壁」につながっていきます。
「被災届出証明書」で受けられること・受けられないこと
被災届出証明書は 「被害があった事実を行政が受け付けた」という証明 です。被害の程度を職員が認定するものではないため、活用の幅は罹災証明書より 限定的 です。
被災届出証明書で対応しやすいケース
被災届出証明書ではカバーが難しいケース
被災者生活再建支援金(住家の全壊・大規模半壊などの認定が前提)
住宅の応急修理制度(住家であることが前提)
固定資産税の減免(被害程度の認定が前提のことが多い)
ご家族にとって大きいのは 「保険・補助・税の減免など、住家であれば自動的に開けるルートが、空き家では開かない」 という点です。だからこそ、 『空き家にしている期間が長くなる前』にどう備えておくか が、現実的な備えになります。
空き家オーナーが直面しやすい3つの壁
被災届出証明書しか出ない、というだけでは終わりません。 その先で空き家オーナーが直面しやすい3つの壁 を整理しておきます。
壁①|火災保険の「水災補償」と「空き家特例」
多くの火災保険は、 水災補償 が標準ではなく オプション扱い です。さらに、空き家のままの期間が長いと、 「住宅物件」ではなく「一般物件」 として扱われ、保険料が上がる・引き受けが難しくなることがあります。空き家と火災保険の関係は、別記事 空き家の火災保険、普通の保険とは別物? でも整理しています。
壁②|解体補助・除却補助の対象外になりやすい
国土交通省の空き家対策総合支援事業などを背景に、各自治体は 老朽空き家の解体・除却補助 を整備していますが、 「特定空家」「管理不全空家」などへの指定や、居住要件・所得要件 が条件になっている自治体が多く、 浸水した直後の空き家がそのまま補助対象になるとは限りません 。利用の可否は 自治体窓口で個別に確認 していただく必要があります。
壁③|災害ごみの処理ルートが住家と異なる
浸水後の家屋からは大量の 災害ごみ(畳・家具・家電・建材など) が出ます。多くの自治体は 罹災証明書(被害程度の認定) をベースに災害ごみの受け入れ・収集を案内しているため、 「住家として認定されない空き家のごみ」は、通常の事業系一般廃棄物ルート に回されることがあります。処理費の負担構造が住家とは異なるという認識が必要です。
そのうえで、 もうひとつ忘れてはいけない のが 民法717条「土地工作物責任」 です。空き家の塀や屋根、樹木などが 強風で飛んでご近所の方や通行人に被害を与えた 場合、 所有者(または占有者)が無過失でも責任を負う構造 になっています。被災届出証明書の有無とは別の論点として、 「被害を出した側」になるリスク も平時から意識しておくことが、空き家オーナーには求められます。

浸水ハザードと地域の事情|東大阪市・八尾市・大阪市
弊社が拠点を置く 大阪府東部 も、台風シーズンには内水氾濫・浸水の警戒が必要なエリアです。 東大阪市・八尾市・大阪市 の一部は、 寝屋川流域 に含まれ、 大阪府の浸水想定区域図 でも複数地点が浸水想定の対象となっています。
東大阪市:東大阪市防災ハザードマップ(洪水・土砂災害・ため池)が公開されています
八尾市:八尾市公式「防災マップ」で大和川・東除川などの想定が確認できます
大阪市:大阪市「水害ハザードマップ」で区別の想定が公開されています
寝屋川市が 「空き家流通促進税」 の条例素案を6月議会に提出し、 市内全域を対象にした全国初の取り組み として注目されている背景にも、流域の浸水・老朽空き家の累積という地域事情があります(関連記事:寝屋川市の『空き家税』、固定資産税が35%上乗せに?)。
ご実家が大阪府東部にある場合は、 「ハザードマップ上で自宅がどの色に塗られているか」 をいま一度ご確認いただくことが、 シーズン前の最小限の備え になります。
株式会社サントが現場で見てきた、浸水した空き家の選択肢
弊社 株式会社サント は、 東大阪市・八尾市を中心に大阪府内全域 で空き家の 買取・再販・解体 を自社で一貫対応してきました。台風や豪雨で被害を受けた空き家のご相談も、これまで何度もお引き受けしています。現場の感覚として整理できる選択肢は次の通りです。
現況のままの買取査定:浸水痕やカビが残った状態でも、 現況のまま での査定をご提示できるケースがあります。ご自身でリフォームや片付けを進める前にお声がけください
自社施工の解体・更地化:解体専業の自社施工チームがあるため、 解体費を抑えやすい 構造になっています
借家人付き買取:被災後にすぐ退去や条件変更をお願いしにくい入居者・借家人がいらっしゃるケースでも、 借家人付きのまま買取 をご相談いただけます
リーガルパートナーとの連携:相続登記・税務相談・保険会社とのやり取りなど、窓口を一本化してお手伝いします
「いま売却するつもりはないけれど、 このまま空き家でいることのリスクだけ整理しておきたい 」というご相談も、無料でお受けしています。
7月のうちにできる、3つの準備
本格的な台風シーズンを迎える前に、ご家族で並べておきたい3つの準備を整理しました。
準備①|ご実家のハザード区分を1度だけ確認しておく
お住まいの自治体の 洪水ハザードマップ・内水ハザードマップ を1度開いて、 ご実家が何色のエリアに塗られているか を確認しておくと、シーズン中の判断が早くなります。スマートフォンに保存しておくのがおすすめです。
準備②|火災保険の証券で「水災補償の有無」と「住宅物件か一般物件か」を確認する
火災保険の 証券(保険契約者の控え) を1度取り出して、 「水災」「水濡れ」 の項目に補償がついているか、 物件種別が「住宅物件」「一般物件」のどちらか を確認します。空き家になって長い場合は、 更新時に契約条件が変わっていないか を保険会社にお問い合わせください。
準備③|「被災届出証明書」の申請方法を、自治体ホームページで1度開いておく
被災届出証明書の申請には 被害状況の写真が必須 です。万一の際にすぐ申請に取りかかれるよう、 自治体ホームページの該当ページをブックマーク しておくのが現実的な備えになります。
FAQ
Q1. 空き家でも「罹災証明書」が出ることはありますか?
完全にゼロではありません。 「居住の実態」をどう評価するか は自治体の運用に幅があり、定期的にご家族が宿泊・管理されていたなどの事情があれば、 住家として扱われる余地 がある自治体もあります。ご実家のある自治体の罹災証明書担当窓口に1度ご確認ください。
Q2. 被災届出証明書は、火災保険の請求に使えますか?
使えるケースが多いです。 被害状況を写した写真と合わせて 、保険会社に提出する添付資料として活用される運用が一般的です。ただし、保険金の支払い可否は 契約内容(水災補償の有無、物件種別など) によって変わりますので、まず保険会社に「空き家であること」を含めて確認してください。
Q3. 浸水した空き家を「解体してしまう」という選択肢はありますか?
選択肢の1つです。ただし、 解体すると土地の固定資産税の住宅用地特例(最大1/6軽減)が外れる ため、 翌年度の土地税負担が上がる 点に注意が必要です。 解体せずに現況買取 という選択肢も含めて、複数の見積もり・査定を並べてご家族で比較されるのがおすすめです。
Q4. 民法717条の「土地工作物責任」は、空き家にも適用されますか?
適用される構造です。 所有者(または占有者) は、 工作物の設置・保存に瑕疵があったことで他人に損害を与えた場合 、損害賠償責任を負います。 所有者の過失の有無にかかわらず 負う「無過失責任」とされる点は、ご家族で1度認識をそろえておかれることをおすすめします。
Q5. ハザードマップ上で「想定区域」に入っていなければ安心ですか?
完全には言い切れません。 内水氾濫(マンホールから水が逆流する型の浸水) は、洪水ハザードマップに反映されきっていない地域もあります。 洪水・内水・高潮の3種類のハザードマップ を、可能な範囲で確認していただくのが安心です。

まとめ|「住家ではない」だけで、開けないルートが増えます
2026年6月のダブル台風通過は、 本格的な台風シーズンを前にした警戒イベント として整理できます。一方で、空き家オーナーが見落としやすいのは 「実居住していない空き家は、罹災証明書ではなく被災届出証明書しか出ないケースが多い」 という制度上の構造です。
住家と非住家で発行される証明書がちがう
被災届出証明書は職員調査がなく、活用の幅が限定的
火災保険の水災補償・解体補助・災害ごみ処理の3つの壁 が立ち上がりやすい
さらに 民法717条「土地工作物責任」 という「加害側になるリスク」もある
打ち手はシンプルです。 シーズン前にハザード区分と保険証券を1度確認 し、 「現況のまま買取・売却に出す選択肢」も含めて並べて比較する 。 『空き家にしている期間が長くなる前』に備えておく ことが、ご家族にとっていちばん負担の少ない備え方になります。
東大阪・八尾を中心に、大阪府内の空き家相談はサントへ
「いま売却するつもりはないけれど、 このまま空き家でいるリスクだけ整理したい 」というご相談も、サントでは無料でお受けしています。 東大阪市・八尾市を中心に大阪府内全域 、寝屋川市・大阪市内・近隣市町からのご相談にも対応しています。
